課題2 カードゲームで人生を楽しくした話

「もう 将棋 はやらない !」

その一言を聞いて、ぼくの将棋の駒を並べる手はピタリと止まった。

見上げるとAくんは、友達と遊ぶために外に駆けだしていった。

「なんで?」発した声はAくんには届かない。

最近は昼休みにA君と将棋を指すのが習慣だった。

思い当たることはあった。もしかして・・

悪い予感が、心の中を満たしていく。止まらない焦燥感

ふと我に返ると、自分の手が駒を並べかけたまま、動けずにいることに気がついた。

あわてて駒を片づけて箱の中に戻す。

気をとりなおしてみる。

気分を変えて本でも読もう。持ってきていた文庫本を開いた。何ごともなかったように昼休みをすごす。まあ明日になればA君の気分も変わるだろう。とのんきに考えていた。

しかしその時の自分は、何も解っていなかった。

もう二度とA君と、将棋を指すことは無かった。

自分は人の気持ちが、わからない人間なんだなと気付いたのは、高校に入ってからだった。

自分の性格との葛藤

高校に入ると勉強は格段に難しくなる。なまじ公立でも少し上のランクに入ったのでふつうに予習、復習しても成績は真ん中止まり。中学なら普通に予習復習すれば成績はどんどんあがっていたのに・・ 勉強時間を増やしてみる。でもどうしても成績は上がらない。

「いくら努力しても、何の成果も出ない?」

フラッシュバック。

A君と最後に指した将棋を思い出した。

「もう一回。もう一回」と真っ赤な顔をして何度も、いくら負けても指してくるA君に勝ち続けてしまった。

バシッ

悔しさのあまりに、将棋盤にたたきつけられる駒。乾いた音が耳を突き刺す

「もう止めよう」と言っても、聞く耳を持たないA君。

ふつうならかわいそうに思って、一度だけでも負けてあげるのが当たり前なのに。

今思えばまわりの子もA君に同情する視線を送っていた。

そんなことも気付かずにA君に勝ちつづけてしまった。

そしらぬ顔で・・淡々と

これは・・

自分も負けることはあったが、教わった父か、同級生。それでも全く勝てないということはなかった。けれど同じ相手にたった一度も勝てないA君の気持ちは、どんなだったのだろうか

もしも中学の時に『3月のライオン』の主人公の気持ちを答えなさい」と言う国語の問題があったら、間違いなく0点だっただろうと思う。

だからと言って持って生まれた性格は簡単に変わるモノでも無い・・

情の厚い人。薄い人。ある程度は生まれ持った部分はあると思う。

自分は自分でしかないから、気長に付き合っていくしかない。重く考えてもしかたがないことだ。

実際にA君の気持ちが少しでも理解できた。今からでもすこしづつでも変われるはずだ・・ 今さら遅いけれども。

カードゲームとの出会い

月日が経ち、ぼくは定年間近の初老のおじいさんになっていた。ふと見かけた七色にピカピカ光るキレイなカード。デッキ構築ゲーム「アリスの時間迷宮」? おもしろそう。カードのデザインも七色に光ってキレイ。

将棋は少しの実力差が明確に結果となって現れるゲーム。それだから精進しがいがあるといえる。

でもこのゲームは配られるカードがランダムなので、実力以外に運の要素もある。

ユーチューブで、覚えてみる。けっこうハマってしまう。

調べてみるとボードゲーム喫茶というものがあるらしい。

「交流会に参加したいんですが」

「初心者 おひとりさま歓迎ですよ」

みんな黙々とゲームをしている。しゃべるのが苦手な自分に合ってる気がする。

まあ当然、まったく勝てることはない。しかし負けることは、まったくくやしくない。それどころか楽しくて仕方がない。声を出して笑いだしそうになる。

長い人生で自分の中の何かが、変わってしまったのだろうか?

きっと今なら、A君とこのゲームをやれば笑いあえるんじゃないかと、ふと思う。

そんな妄想にひたりながらも人生は、続いていく。

まあお迎えが来るまで、自分なりに楽しく生きていこう。

 

 

 

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