「もう 将棋 はやらない !」
その一言で ぼくの将棋の駒を並べる手はピタリと止まった。
見上げるとAくんは、友達と遊ぶために外に駆けだしていった。
「なんで?」と問いかけるぼくの声は、届かない。
最近は昼休みにA君と将棋を指すのが習慣だった。
思い当たることはあった。もしかして・・
悪い予感が心の中を満たしていく、止まらない焦燥感
・・・
ふと我に返ると、自分の手が駒を並べかけたまま、動けずにいることに気がついた。
あわてて駒を片づけて箱の中に戻す。
気分を変えて本でも読もう。持ってきていた文庫本を開いた。何ごともなかったように昼休みをすごす。まあ明日になればA君の気分も変わるだろう。とのんきに考えていた。
しかしその時の自分は、何も解っていなかった。
そしてもう二度とA君と、将棋を指すことは無かった。
自分は人の気持ちが、わからない人間なんだなと気付いたのは、高校に入ってからだった。
葛藤とセールススキルとの出会い
高校に入ると勉強は格段に難しくなる。なまじ公立でも少し上のランクに入ったのでふつうに予習、復習しても成績は真ん中止まり。中学なら普通に予習復習すれば成績はどんどんあがっていたのに・・ 勉強時間を増やしてみる。でもどうしても成績は上がらない。
いくら努力しても、何の成果も出ない?
フラッシュバック。
A君と最後に指した将棋を思い出した。
「もう一回。もう一回」と真っ赤な顔をして何度も、いくら負けても指してくるA君に勝ち続けてしまった。
「バシッ」
悔しさのあまりに、将棋盤にたたきつけられる駒。乾いた音が耳を突き刺す
「もう止めよう」と言っても、聞く耳を持たないA君。
ふつうならかわいそうに思って、一度だけでも負けてあげるのが当たり前なのに。
今思えばまわりの子も、A君に同情する視線を送っていた。
それすらも気付かずにA君に勝ちつづけてしまった。
そしらぬ顔で・・淡々と
これは・・
もし中学の頃に『3月のライオンの主人公の気持ちを答えなさい』という国語の問題が出たら間違いなく0点だっただろうと思う。
自分も負けることはあっても、教わった父か、同級生。それでも全く勝てないということはなかった。けれど同じ相手にたった一度も勝てないA君の気持ちは、どんなだったのだろうか?
人の気持ちがわからない人間?
だからと言って持って生まれた性格は簡単に変わるモノでも無い・・
情の厚い人。薄い人。ある程度は生まれ持った部分はどうしてもあると思う。
今からでも変われえるはずだ。現に少しでもA君の気持ちがわかったのだから・・
そして今から約5年前に時を遡ってのこと
※「稼ぐコピーライターの条件は、人の痛みに気づくための思いやりの心を持つことだ。」
これは本屋で見かけた「ザ・コピーライティング」という、本の序文。
最初は何を言ってるのか解らなかった。セールスマンというのは、悪者という認識だったから
人の悩み、痛みをリサーチすることで、商品がその人の悩みを解決する手助けになる。
良い商品が、売れれば売り手、買い手や経済。すべての人が幸せになる。
なるほど・・ のめりこんで勉強してみる。
まよまよ先生のユーチューブもわかりやすくて楽しかった。
たしかに セールスのスキルは仕事の役には立つけど、それ以上に
ぼくにとってのセールススキルというのは、「思いやりの心を持つ人はすべての人を幸せにする」ということを論理的に言語化したものだから、言い換えれば、幸せへのパスポートのようなもの。
お金は大事だけど、お金には代えられない大切なモノ。一生付き合っていこうと思う。
好きな言葉
※人を思いやる気持ちと、人に利益をもたらす行動をすることが、すべての根本である。
弘法大師(空海)
カードゲームとの出会い
いつのまにかぼくは定年前のおじいさんになっていた。ふと見かけたカードゲーム。七色に光るキレイなカード。デッキ構築ゲーム?
将棋は少しの実力が明確に結果となって現れるゲームだからこそ精進しがいがある。
でもカードゲームは配られるカードがランダムなので運の要素もある。
ユーチューブで覚えてみる 結構楽しい
また調べてみるとボードゲーム喫茶というものがあるらしい
「交流会に参加したいんです」
「初心者の人歓迎ですよ」
参加してみる。みんな黙々とやってる。無口なぼくには合ってる感じ。当然全く勝てない、でも楽しくて仕方がない。思わず声を出して笑いだしそうになる。
今ならAくんと、このゲームをやれば笑いあえる気がすると思う。
そんな妄想にひたりながらも人生は、続いていく。まあお迎えがくるまで楽しく生きていこうと思う。

コメント